空飛ぶドクターと行ったお伊勢詣りと和歌山熊野詣

入院中で車イス使用の進行性核上性麻痺の夫と新千歳空港から飛行機で旅行に行ってきました。

2013年5月22日(水)〜5月24日(金)


きっかけ>2出発前と持物>
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旅を終えて>7車イストイレ>8風景写真集

※いま見ているページは、「出発前と持物」です。




出 発 前



 出発の数日前、札幌から車で約3時間離れているD市に住む母から電話が来ました。

「旅行の用意できたかな?と思って」
と母。その声は、なんとなく不安そう。

「いや、まだ、全然できていないわ」
と私。

「背広は買ったの?」

「セ・ビ・ロ?」

「うん」

「セビロ???背広?スーツ?」

「うん。観光地に行くんでしょ?リュウさんの背広、買ったかな、と思って」

「 いや・・・???、動きやすいもので、着慣れたものにするから」

 私の両親は、父の定年後、日本国内、国外、たくさん旅行をしています。去年も、ロンドンオリンピックで湧いたイギリスへも行っています。それらの旅行先で父が、観光地で背広を着ていたことがあるでしょうか?それにリュウは、何年も前から手も足も動きが悪いし、たくさんのボタン、ファスナーやベルトの付いた服は、持っていません。いまは助けてもらって服を脱ぎ着し、こちらも何かあったら、すぐに脱いだり着たりできるようにとのことで、リュウが入院前、いつも着ていた服をそのまま着てもらおうと思っていたところでした。あまり見栄えはよくないかもしれませんが、からだの不自由な人向けの服は、身近に売っていませんし、手に入りにくいのです。

 そのリュウに、観光地に行くから背広を?車イスで移動のリュウに?突拍子もないように思えたそのセリフに、わが子にかかわることになると、自分たちの経験がゼロになるのではないだろうか、と感じました。心配しすぎではないかと思いましたが、何歳になっても、親や親、子は子、と思わせる内容の電話でした。そして、その気持ちが、私にじゅうぶん伝わってくるのでした。

 最後に、
「あなたも準備からなにから、旅行中もね、大変だと思うけど、気を付けて行ってきてね」
と母。

 ありがとうお母さん。


 リュウは連日、いろいろな看護師さんから、旅行のこと話しかけられたようです。あと何日、楽しみだね。ときには、お土産待ってるね、と。

 ある日は、床に足をおろしベッドに腰かけ、私が買った旅行のガイドブックを見ていた時もあったと、看護師さんが教えてくれました。自分でからだを起こし、ベッドに座るということは、ほとんどしない行動です。自分でからだを起こすこと自体が困難なのです。ガイドブックを見ようと、からだの中に力が湧いてきたんですね。

 看護師さんは看護師さんで、「いつどこどこに行く旅行についての話題を患者さんにすることができる嬉しさ」、リュウも「そのことについて話しかけられる嬉しさ」を感じているように思えました。

 看護師さん、ありがとうございます。

 リュウは、「熊野古道が楽しみ」と言っていました。
 私は私で、「伊勢神宮前のおかげ横丁の赤福の本店で、お皿にのった作りたての赤福が楽しみ!」と言いました。

 リュウの病院のベッドの上のコルクボードに貼った旅行のチラシ。リュウと私、その日を楽しみにしていました。看護師さんたちも興味を持って、私たちにいろいろ話しかけてくれました。
 右の新聞は、5月3日付北海道新聞の生活面「いずみ」に「夫が残してくれたパン」というタイトルで私の投稿が掲載されたもの。看護師さんがラミネート加工してくれました。




持 ち 物


 つぎに旅行の持ち物のことを書きます。
 一番重要だと思ったのが、すぐに水分補給できるような態勢です。そこで頭に浮かんだのが先日、近くの大型店で偶然見かけたバッグ。トートバッグ型で、半分が防水仕様でペットボトルと氷などが入れられるようになっていて、もう半分が持ち物を入れられるようになっていたクーラーバッグです。早速、買いに行きました。値段も1500円でした。防水仕様のところには保冷剤と一日分の飲み物を入れました。もの入れには、リュウの食事にかかわるものを入れました。
 旅の間中、このバッグを持って歩いていたのですが、とても便利でした。

 写真は今回買ったクーラーバッグに、いつも使っているスプーンとストローカップ。あとは、外箱がビニールのボックスティッシュと、使い捨て介護用エプロン。
 スプーンは、その人の手の動きにあわせて角度が変えられるからだの不自由な人向けのものです。写真は、青芳製作所のバルーンというシリーズのスプーンです。リュウは、ひじが体から離れなければ離れないほど、スプーンの柄に角度がつきます。ひじを体につけたままスプーンを口に運んでみると、角度の意味がわかります。他の方のこういったスプーンが帰りに飛行機乗る時にちょっと大変なことになりました。
 ストローカップは、ピジョン製です。
 病院では、洗って使うエプロンを使っていますが、お出かけの時には、この使い捨てエプロンを持って行きます。吸水・防水加工してあり、重宝しています。テイコブのものです。

 リュウは水分量は、主治医の指示で一日最低800ccなので、ペットボトルのお茶のほかに、紙パックの飲料とドリンクゼリーを入れました。このドリンゼリーはイオン系列に100円以下で売っているもの。少し味があった方が飲みやすいです。調子が悪いと、ストローで吸えなくなります。ドリンクゼリーだと、口に含んで、少し押す感じでも摂取することができます。中にストローが付いているので、吸うこともできます。ストローの長さがないので、少し吸ったらすぐに口に入ります。
 旅行では、大塚製薬のオーエスワンという経口補水液のゼリータイプをいただきました。写真のドリンクゼリーと形状は一緒です。ゼリータイプのものは、飲み込みが悪くむせやすい人にもやさしいです。
 ツルハドラッグのエムズワンシリーズのドリンクゼリーも100円以下で手に入ります。これもグレープフルーツとかの味がついています。
 ダイエーでも写真の様な形状のゼリー飲料が100円以下で売っています。
 リュウはまだ試していませんが、家族の会の人からもアイソトニックゼリー(←検索してみてください)などを教えてもらっています。
 リュウは、水分摂取が困難な時があり、本人が嫌がっている鼻からや胃ろうのくだの水分摂取にいたらないためには、このあたりの水分摂取の方法が、重要です。
 それから、リュウにも話していたのですが、錠剤で水分が補給できるものがあればいいな〜!そう思っています。



 あとは、病気のせいで尿意を伝える感覚と実際の出るタイミングが合わないことがあるので、紙パンツの必要があり、そちらの用意もしました。尿パッドもです。病院でも紙パンツで過ごしています。旅行でも用意しました。でももちろん、尿意を伝えられたら、すぐにトイレに行きます。また旅行では、トイレに行きたくても行けない時があるので、トイレタイムには必ずトイレに寄りました。そのため、旅行の副タイトルが、「トイレツアー」となるくらいです。そのトイレの写真は、一枚のページにまとめました。

 それから、薬ですが、アロハ オラの江口優子さんからお薬手帳と、薬を二日分余計に持ってきて下さいとのことで、五日分の薬を持って行きました。なにかトラブルがあり、帰宅が延びた時に必要です。
 あと、健康保険証に特定疾患受給者証に身障者手帳を、使うかどうかわかりませんが、これらも持参しました。

 車イスは、病院で、リハビリの先生が用意してくれました。クッションマットもです。座りっぱなしの姿勢が多いため、ほんの少し、お尻に傷ができている状態でした。お借りしたクッションマットに加え、私が買ったリュウの所持品で空気でふくらませるクッションマットもバッグに入れました。

 床ずれ防止、車イス用の空気でふくらませるクッションマット。使わない時は、たためます。弘進ゴム株式会社の製品です。


 向こうは暑いかと思い、帽子に首に巻くガーゼのタオル、扇子、おりたたみ日傘も用意しました。

 旅行の持ち物もだいたい用意できました。

 さあ、実際リュウは、どうやって空を飛ぶのでしょうか。

 私は、低床車の路線バスで見た光景を思い出しました。
 ある日私が乗ったバスが、バス停に着くと、運転手さんが前の入り口から降りていきました。どこへ行くのだろうと思って見てみると、バス停に車イスの男性の方がいました。みなさんが中央の広い乗降口から乗り終わるのを待って、つぎに乗降口のステップからスライド式の板を出しました。そうするとバスと歩道に階段がなくなりスロープになります。運転手さんは、車イスを押していき、そのまま真っすぐ突き当たりまで押していったあと、向きを前向きにし、車イスの車輪を固定しました。入り口から真っすぐ突き当たりの部分が座席がなく、そこに車イスの方を移動したのです。車イスの方は、他のみなさんと同じように進行方向に向いている格好になり、窓から外の景色を眺めることができました。その時はひとりでしたが、もうひとり、車イスの方がいても、大丈夫なくらいのスペースがあったかな〜。

 その時の光景を思い出し、飛行機でもそうだ!と勝手に思いました。車イス用のスペースがあり、そこに車イスに乗ったまま移動し、車輪を固定する!きっとそうにちがいない!
 江口優子さんに最初に問い合わせた電話で「車イスのまま機内に入り、そこから座席に移動していただく」と言われたこともすっかり忘れ、そんなことを考えていました。
 さて、私の想像はあたっていたでしょうか。続きは、「第一日目」をお読みになって下さい。

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   江口優子さんの会社 ALOHA OLA(アロハ オラ)のホームページはこちら(←クリックしてください)です。
 空飛ぶドクターの坂本泰樹先生のホームページ 旅行医学の「カノヤ・トラベルメディカ」(←クリックしてください)です。

 入院中の進行性核上性麻痺のリュウと多動と自閉症の個性を持つ次男ワタルとの日常を綴った私のブログ「やさしいまなざし」はここをクリックしてください。



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