入院中で車イス使用の進行性核上性麻痺の夫と新千歳空港から飛行機で旅行に行ってきました。 |
2013年5月22日(水)〜5月24日(金)
|
1きっかけ>2出発前と持物> |
3第一日目>4第二日目>5第三日目> |
6旅を終えて>7車イストイレ>8風景写真集 |
2013年4月末、北海道新聞のひとつの新聞記事のタイトルが目に入りました。
「療養中の旅する夢支えます」「医師も同行ツアー企画」 私(バニラ)はそれを見て、記事を読み始めました。体調に不安がある患者の人でも行ける旅行を紹介する内容です。ツアーを企画したのは、北海道恵庭の看護師江口優子さんで、添乗員の資格も持ち、旅行の付き添い看護を主に行なう事業所「アロハ オラ」の設立者です。 その江口優子さんが付き添い看護をし、旅にはお医者さんも同行するというものです。 お医者さんは、九州福岡の「空飛ぶドクター」坂本泰樹先生。坂本泰樹先生は、高齢者の方や末期がんの患者さんの旅行添乗をするお医者さんです。 え!そんなのあるの!それにそんなこと考えてくれる人もいるの!それだったら、いまのリュウ(夫)で行けないかな! そう思いました。でも行き先は、道外の三重県伊勢神宮、和歌山県熊野古道などで、それも往復飛行機です。 平日なので私の仕事もあるし、ワタル(養護学校高等部1年)の学校もあるし、それに、主治医の承諾もいるし、それからそれから、リュウのからだの状態で参加できるんだろうか、とあれこれ考え始めました。 でも行きたい!リュウと二人で旅行なんて、新婚旅行でバンコクに行って、それから子どもが産まれる前に、車にテント積んで東北旅行した約20年前ぶりです。それも、進行性核上性麻痺という病気になって、入院中で、飛行機に乗って旅行に行くなんて、考えてもみなかったことです。 私はイブキとワタルに、「イブキは高校の修学旅行で沖縄行って、お母さんが行きたいちゅら海水族館見てきたよね?ワタルは、高校の修学旅行で飛行機に乗って、ディズニーランドに行くよね?お母さんもお父さんと二人で飛行機に乗って旅行に行きたい!」と訴えました。 さあ、色々なところに確認や手配が必要です。リュウには、がっかりさせないために行けるめどが付いたら伝えようと思いました。まずは、リュウが参加できるかどうかの電話を、新聞を見た4月末、江口優子さんにしました。 「もしもし新聞で、えぇ、それでいま進行性核上性麻痺で入院中の夫は旅行に参加できますか?私が付き添って。えぇ、車イスでの移動になります。歩けることは歩けますが、歩行は危険です」 「大丈夫です」 と江口優子さん。 「え!大丈夫?食事なんですが、今は、刻み食で」 「ホテルも出先の食事もすべて刻み食対応できます」 「え!そうなんですか!」 カロリーや塩分の制限の食事や胃ろうの方も対応しているとのこと。 「飛行機なんですけど、乗り降りが心配。あと飛行機のトイレはとても狭いから、乗る前に空港の身障者用トイレに寄ってから乗ります」 「飛行機は車イスに乗ったまま機内に入れます。そこから座席に移動していただきます。飛行機のトイレは、車イスのまま中に入れます」 「え!トイレに車イスのまま?」 「はい、飛行機によっては車イス対応のものがあり、そのタイプの飛行機に乗ります」 「そうなんですか!」 「バニラ様、まずは主治医の承諾が必要です」
そう言われ、電話を切りました。 「こういうのに参加したいのですが、主治医の許可が必要で」 「伊勢詣?お医者さんも一緒に?まあ!こういうのがあるの?行けるといいですね。リュウさんも喜ぶわぁ。うん、今のリュウさんなら大丈夫そうですね。でも、気を付けなくてはいけないことありますから、先生と私でちょっと考えてみます」 そうして次の日のことです。 「あ、バニラさん、M先生がご主人のA○○でよければいいということですよ」 そう看護師長さんが私に言いました。 A○○?Aから始まる医療用語で私が知っているのは、AED。「リュウが持っている自動体外式除細動器でよければいい?」と主治医が?
そんなこと言うはずないと私は思いました。それにリュウは、自動体外式除細動器は所持していないのです。
A○○とは、日常生活動作をあらわす英語の頭文字で、ADLです。ご飯を食べたり、椅子から立ったり座ったり、歩いたり階段を上ったりの日常生活を送るための身体機能の状態、あと、認知症状等で会話がどれくらいできるとかの精神的な面での状態をあらわす言葉です。 やったー!
あとは、私の職場の上司への伺いと、ワタルの問題です。 やったー! いよいよ、本人に発表する日が来ました。 「リュウ、二人で旅行に行かない?」 すると、リュウは、 「お伊勢詣りだろ?」
と答えました。知っていた! 「モンダイは・・・」 問題は?あ、そうだね、初めて車イスで旅行に行くし、食べるものとか、本人だから、色々不安なことも山ほどあるよね 「問題は?なに?リュウ」 私がそう言うと、むずかしい表情のまま、言葉を続けました。 「モンダイは・・・、テンキだな・・・」 「テンキ?天気?」 「ウン」 そう言って、深くうなづきました。 「あ、そうだよね、雨降ったら、大変だものね!カッパ持って行こうね!」 と言うと、 「ウン」 とまた深くうなづきました。 「楽しみだね!何十年ぶりだろう!二人で旅行なんて。それも飛行機で三重県の伊勢神宮だよ。それに二日目の大浴場、入浴介助してくれて入れるんだって!」 私がそう言うと、表情が和らぎ、 「ウン」 とまた深くうなづきました。 その日から、私たちは旅行のことについて、話し始めました。リュウと私のからだの中に、「旅行」というあたらしい血管ができ、そこに温かい血がドクドクと流れはじめたような、そんな感じがしました。
【空飛ぶドクターと行くお伊勢まいりと和歌山熊野詣】
江口優子さんの会社 ALOHA OLA(アロハ オラ)のホームページはこちら(←クリックしてください)です。 |
このページの一番上へ▲ |
※いま見ているページは、「きっかけ」です。
1きっかけ>2出発前と持物> | |
3第一日目>4第二日目>5第三日目> | |
6旅を終えて>7車イストイレ>8風景写真集 |
このページの感想は、Cafeつぶ庵(掲示板)までどうぞ。 |
Copyright (C) 2003-今年 Vanilla Web Site All rights reserved. |