空飛ぶドクターと行ったお伊勢詣りと和歌山熊野詣

入院中で車イス使用の進行性核上性麻痺の夫と新千歳空港から飛行機で旅行に行ってきました。

2013年5月22日(水)〜5月24日(金)


きっかけ>2出発前と持物
3第一日目>4第二日目>5第三日目
旅を終えて>7車イストイレ>8風景写真集

※いま見ているページは、「第一日目」です。




第一日目


↑早朝病院に行き、夫の着替えを手伝い、助手席へ。後ろには、病院でお借りした車イスと、クッションマット。この車イスは、リハビリの先生が選んでくれました。車イスにもいろいろ種類があるようです。一目でわかるのでは、車輪の大きさです。すごく大きい車輪のものは、乗っている人が手で動かせます(自走式)。小さい車輪のものは、もっぱら押してもらう用の車イスです。写真は、押してもらう用の介助式の車イス。

↑駐車場は、新千歳空港に事前に予約をしました。A駐車場の身障者枠の駐車場で、予約料が500円です。駐車場に入る時に発券ボタンを押さないで、係員呼び出しボタンを押し、予約していた旨を話すと、係員の人が来て、誘導してくれます。ここが一番国内線の乗り場に近い駐車場とのこと。駐車場代は帰りの精算時、身障者手帳提示で半額になります。
 ここで、警備の方、シャッターを開けていた作業の方が声をかけて下さいました。優しい!そして、警備の方が荷物を集合場所まで運んでくれました。
 あまり早く行くと、駐車場に着いてもシャッターが開いていなくて、空港の建物の中を進めないです。時間の確認が必要です。私たちは、シャッターが開くと同時くらいに、駐車場に着きました。

↑ANAの新千歳空港専用の飛行機内に入る車イス。
 持参した車イスで入ると思っていたら、目の前にこの車イスが運ばれてきました。持参した車イスは、機内へは持ち込めず、荷物と一緒に運ばれます。搭乗手続きが済んだら、この車イスに乗り換えます。飛行機によっては自分の車イスで機内に入れるものもあるそうです。


 この時初めて、アロハ オラの江口優子さん、他の参加者の方たちとお会いしました。
 それからもしかしたら入院中の人って、リュウだけ?と思いました。入院中のリュウが旅行会社のツアーに行くのって、日本初?いや、こういったツアー自体が日本初?

↑いよいよ機内へ。客室に誘導する係の男性の方が、ずっと車イスを押してくれました。一番最初に通されました。団体は通常半分から後方の座席ですが、からだの不自由な方は、最前列か最前列に近い席です。夫は通常席の最前列です。飛行機内にはまず前向きに入り、通路に向かう前に後ろ向きになります。

↑これから、後ろ向きで座席と座席のあいだの通路に行くのですが、まず大きいタイヤが外されました。小さいタイヤだけになりました。車イスの横幅を縮めるためです。

↑次に肘掛けが車イスの後ろに収納されました。これも車イスの横幅を縮め、座席に乗り移りやすいように。

↑肘がぶつからないように、押さえてもらいながら、後ろ向きで、通路と通路のあいだを進んでいます。車イスから座席に、助けてもらいながら移動しました。通路側の席に無事に座れました。この車イスは、飛行機には積みません。

↑ついに飛行機に乗りました!やったー、空を飛んだ。朝の8時です。

↑全日空702便の車イス対応のトイレ。

↑赤ちゃんのオムツ替え用の収納式の棚もありました。

↑ドアは、外側に全部開くようになっています。

↑出発前にトイレに寄ったので、リュウはこのトイレは使いませんでした。トイレに行く時は、機内にある簡単な車イスを用意してくれるそうです。介助の人も一緒に入るとなると、窮屈そうでした。飛行によっては、もっとスペースが広いものもあるそうです。

↑私の最前列の座席の前の壁にあった三つのあな。隣に座っていた江口優子さんが、赤ちゃんをのせるためのカゴが設置できると教えてくれました。

↑10時前に中部国際空港に着きました!
 ANAの中部国際空港の車イスが用意してあり、それに乗りました。
 機内ではやはり、大きいタイヤと肘掛けが外されていました。乗った時と反対で全員が降りてから、通路と通路のあいだに機内用車イスが運ばれ、それに移動しました。飛行機内の前の広い所で、大きいタイヤと肘掛けが設置され、また客室誘導係の人が、押してくれて、空港内へ。この車イスは、新千歳空港のものとまた少し違っていました。

↑中部国際空港で、空飛ぶドクター坂本泰樹先生と近畿日本ツーリストの和歌山支店の支店長さん、バスガイドさんドライバーさんとご対面。前の乗降口から乗る普通の観光バスを目の前にしています。
 リュウは、足を慎重にあげ、バスの手すりや私の手すりにつかまり、みんなにからだを支えてもらい、ゆっくり車内へ。
 一番前の窓側に座りました。

↑バスガイドさんがいる観光バスにリュウと乗ったのはいつ以来?イブキが赤ちゃんのとき、東京のはとバスに乗って以来でしょうか。
 また、二人で観光バスに乗れるなんて。

↑途中サービスエリアでトイレに寄った後、お昼に三重県伊勢市二見町の「二見プラザ」に着き、昼食です。こちらが私の普通食。

↑こちらがリュウの刻み食。もう食べるのにちょうどいい具合になっていました。マグロのお刺身。病院ではお刺身が出ないから嬉しい!車イスのままテーブルへ。

 刻み食とは、噛む力が弱い人とかが食べる食事の形態です。刻みの大きさは、ゆでたまごをたまごサラダくらいにするために切った大きさくらいでしょうか。あとは、小さくてもギョウザの具くらい。
 リュウは歯がほとんどなくて、噛むことが困難です。そのため病院では刻み食です。ご飯は水分が少なめのおかゆです。スプーンで食べているので、すくうにもやさしい状態です。
 えん下(嚥下)に問題がある人は、この刻み食は、さらにとろみをつける注意が必要です。なぜとろみをつけるかという説明をします。
 もしも私たちが、パウダー状のきな粉とかを口の中に入れて、ちょっとでも息を吸ったらどうなるでしょうか。軽い粒子がいっきにノドの奥までいって、気管に入り、ゲホゲホとなります。そうならないためには、どうするか。きな粉のかたまりを舌の先に慎重に置き、少しだ液でしめらせ、粉っぽいのをちょっとドロッとしたかたまりにして、ノドの奥に運んでいきます。無意識のうちにそうしていると思います。
 えん下が困難とは、私たちの「きな粉状のもの」が何でもそうなってしまいます。つまり、飲み込む態勢を整える前に、何でものどの奥に到達してしまうのです。水とかの液体もです。でも最初からドロッとしたものだったら、もういつでもノドを通過できる状態なので、大丈夫なのです。そういうわけで、刻み食やお茶や味噌汁にもとろみをつけます。
 リュウは、えん下は比較的落ち着いていて、味噌汁とかに、とろみはつけていません。ある程度のものなら、とろみをつけないで、刻んだものでも大丈夫です。でも、湿り気がなくパサパサした刻んだものとかは、ゴホゴホとなります。
 刻み食の欠点は、もとのお料理の姿が想像つかない時がある、ということです。病院でリュウのおかずの一品が何だろうと思って、普通食の人のを見てみると、ロールキャベツでした。

 あと刻み食の説明ではないですが、とろみ剤というものが薬局で売っていて、液体にまぜるとすぐに何でもとろみ状になります。
 リュウの食器ですが、病院では、自助食器というものを使っています。
 平らなお皿だと、スプーンですくおうとすると食べ物が逃げてしまい、お皿の外にこぼれてしまいますが、ふちが90度のものは逃げないで、すくうことができます。灰皿のかたちを想像してもらえるとかたちがわかると思います。
 自助食器の底に滑り止めがついていて、左手はそえなくても、動かないようになっています。
 コップもあまり傾けなくても飲めるものが売っています。上から見るとすり鉢状のかたちになっているものです。
 旅行での食器をどうしようかとも思ったのですが、あまり病院に近いものだと旅の気分も半減するかと思い、事前に何も言いませんでした。そのときそのときで、こういう食器あったらくださいとは、言いました。お料理のお店の方、いろいろな対応ありがとうございました。

※実は、ここの二見プラザに、「赤福二見プラザ店」がありました。箱の赤福も売っていたのですが、のれんの向こうにお休みどころがあり、そこでは、赤福氷やお皿にのった作り立ての赤福があったのです。私は、そこのお店の前を通り、凝視していましたが、ここの次は、伊勢神宮に行くので、赤福本店で食べようと赤福二見プラザ店を、後ろ髪をひかれながらもあとにしました。

「さあ、リュウさん見て、伊勢二見の観光名所の夫婦岩よ」と江口優子さん。リュウが海を見たのは、何年ぶりでしょうか。あまり暑くもなく、ひろびろとして気持ちがいい〜。風も気持ちがいい〜。よかった〜。北海道の海とはまたちがいました。
 次は、伊勢神宮に出発です。






↑伊勢神宮の外宮です。14時半。外宮も、このあと行った内宮も広くて、伊勢神宮で電動車いすがありました。それをお借りしています。
「さあ、リュウさん、ここは私が車イスを操作しますよ〜!」と背広を着用している近畿日本ツーリスト和歌山支店支店長さん。

↑こちらは内宮。ひろいひろーい。この時16時です。外宮の見学スタート時から、伊勢神宮専属のピンクの服を着た男性の方が、今年は式年遷宮の年ということもあり、熱心にガイドして下さっていました。

↑伊勢神宮内宮の五十鈴川御手洗場の石畳の階段。ここは、車イスでは移動できないので、支えられながら、ゆっくり階段を下りました。

↑参拝する前に、心身を清める場所です。リュウも川のほとりまで来ることができました!
 川の中には、小銭が。

↑参道の一番奥にある正宮の石段。
 実はリュウは、電動車いすに乗るのも、それも砂利道で乗るもの初めてで、あまり乗り心地が良くなかったようです。それで、チャンスがあったら降りたがっているようでした。リュウの目の前に見えた正宮の石段、リュウは思わず、のぼり始めたんです。
 坂本先生と私が両脇で脇をささえ、見守るように支店長さんが着いて来て下さり、一番上に上がりました!そこで、リュウと私は、お参りすることができました。よかった!

↑正宮での参拝も終わり、帰り道。坂本先生が、リュウの車イスを操作して下さっています。この時間は、17時09分。
 このあとも熱心なガイドさんの説明があり、伊勢神宮の外に出たのが、17時36分。その時、熱心なガイドさんが、熱心な最後のガイドをしてくださいました。
 「今は17時36分。おかげ横丁は、17時半までです」
 それを聞いて、私は、からだ中の力が抜けていくのがわかりました。
 私は、赤福本店に行けなかったのです。
 あまりにも熱心で、時間を忘れてしまった?

 次は、宿泊先の「志摩観光ホテルクラシック」へ。








↑疲れた〜!けど、お部屋も広いし、昭和天皇がお泊まりになったり、小説の舞台にもなった格式ある立派なホテルだよ〜。嬉しいね〜!

↑窓の外から、英虞(あご)湾が見えます。真珠の養殖しているのも見えます!夕日が沈みそう〜!
 わあ〜、景色いい!リュウ!見て見て!

 次は、夕食だよ〜。

↑志摩観光クラシックホテルのレストラン ラ・メール クラシックのフランス料理の今晩のメニューです。「空飛ぶドクターと行くお伊勢詣りと和歌山2泊3日の旅 様」。ここをクリックすると、上のメニューが大きくなります。お皿も銀のスプーンとかもすてきです。

↑「海の幸と野菜のサラダ仕立て ブロッコリームースと海老クリームを添えて」の左が私のものと、右がリュウの刻み食です。リュウのものには、トロトロのジュレがかかっていました。飲み込みにやさしいです。見た目もきれい!私の方にはパンが添えられていました。ソースが美味しく、パンにつけて食べました。

↑「高糖度完熟トマトのクリームスープ」。私には、カリカリのフランスパン(?)が添えられていますが、食べられないので、リュウにはありません。

↑「海の幸のスペシャリテ アメリカンソースとベルモットの2色ソース」。こちらは私の方。

↑こちらは、リュウの方。

↑ここでお口直し(?)、箸やすめ(?)なのか、メニューには載っていないデザートが。左が私。右がリュウ。ここで私の頭の中に、かすかな疑問がわきました。
「どうして、リュウだけデザートがちがうんだろう?みんなと同じでも大丈夫なのに?」
 ちなみに今回の旅行、特別食はリュウだけで、他の方はみなさん、普通食でした。

↑最後のメインディッシュ。「牛フィレ肉のストロガノフ サフランライスと共に」。こちらは私。

↑こちらはリュウ。お料理を運んでくださった方が、「牛肉をもっと細かくもできますので、おっしゃってください」と、声をかけて下さいました。リュウは、食べられました。サフランライスは、写真からも私たちより柔らかくなっていたものと思います。

↑メインディッシュのあと、リュウにおかゆが。
 フランス料理店なのに、和食器です。なんか醤油っぽいたれもついていて、それを垂らして食べました。和食器もすてきです。リュウのために用意してくださっていました。
 最初のお料理と、トマトスープに付いていたパン、リュウには添えられていなかったので、おかゆが出されたのでしょう。そういえば、お料理をはこんで下さっていた方が、「いつでもおかゆお出しできます」とたびたび、私に言っていました。それを私は、なにも反応しなかったですね。すみませんでした。

↑「デザート」です。
 ここでまた疑問が。
「リュウだけどうして違うんだろう?リュウは私たちのデザートに合わせることはできないけど、私たちはリュウに合わせることはできる。どうして?でも、リュウのデザートの色、変わってる、どんな味がしてるんだろう。私も食べてみたい」
 そう思って、リュウにことわり、この写真の右側のデザートを食べてみました。
 感想ですが、私はその美味しさに、おどろきました。この旅行の中で、一番美味しかったもの、それは、このリュウに出されたデザートです。
 そこで旅が終わってから、考えました。もしかしたら、刻み食というハンディがあるリュウに、ハンディがないムースとかのデザートだけは、リュウにだけ、最高のものを出して下さったのではないだろうか、ということです。さっき出されたリュウに出されたデザートもリュウだけ違っていたのです。それは私は食べませんでしたが、最高の味だったのかもしれません。
 これは、旅が終わってから、私が抱いた気持ちです。ラ・メール クラシックのシェフが、リュウが食べられる最高のデザートを、リュウにだけに出して下さった。私はそう感じ、そう思う度に、感謝の気持ちでいっぱいになり、胸が熱くなります。

 最後の「飲み物」です。私は、コーヒーです。リュウもコーヒーを選んだのですが、「コーヒーゼリーも用意してございます」と伝えられ、コーヒーゼリーをお願いしました。さきほど、えん下の説明をしましたが、サラサラの飲み物も、えん下機能が低下している人は、むせる原因になるのです。ここの刻み食は、よくわかってくださっていました。本当にありがとうございました。
 バスガイドさんも「美味しんぼがどうの」と言っていたのですが、帰宅してから、マンガ「美味しんぼ」に載っているレストランだとあらためて認識しました。リュウが好きで集めていた「美味しんぼ」ですが、志摩観光ホテルクラシックが出てくる巻は、いま、リュウのベッドの枕の横にあります。
 お料理は、しゃべりませんが、心に話しかけてくるお料理もあるんだと、初めてわかったような気がします。


 この夕食ですが、近畿日本ツーリストの支店長さんもみなさん同席していましたので、参加者の方の声を聞いて欲しくて、私は向かい側の方に話しかけていました。参加者の方もみずから、この旅行の企画について話していました。
 「こういうのすごく嬉しい!素晴らしい!」「新聞で知ってから旅行までの締め切りが短かった。長かったらもっと参加者がいたのではないか」「前まで普通のツアーに参加していたけど、だんだんまわりの人に付いていけなくなり、参加しなくなっていた」「家族とは旅行するけど、ひとりで旅行したかった」などです。
 新聞記事をお子さんが見つけ、「こういうのあるよ、行っておいで〜」とご家族にプレゼントされたという参加者の方も。
 次は「どういう企画に参加してみたいですか?」と私。「沖縄に行きたいわ!」と参加者の方。「沖縄いいですね!」。
 私は、伊勢神宮の広い広い敷地内を電動車いすで移動していましたが、こちらから移動するのではなくて、船とかに乗って移動したい、と感じたのです。でも無理かな?と思い、この時何も言いませんでしたが、次の日、江口さんに聞いてみると、「大丈夫ですよ!車イスでも乗れる船があって、今回も時間があったら、ツアーに組み込んでいたんですよ!」と言ったので、びっくりしました。


 次は、シャワーを浴びて、就寝です!






↑江口さんがホテルに用意していただいていたお風呂に入るためのイスがお部屋にありました。ここのホテルは、温泉はなく、部屋にあるお風呂でシャワーでからだを洗います。

↑訪問看護の経験もある江口さんですが、用意していただいたイスを写真の用にお風呂に設置しました。食事のあとのシャワータイムです。リュウにこちら側を向いて立ってもらい、そのまま腰かけてもらい、二人でからだの向きを90度変え、あとはシャワーでからだを洗いました。どうやってシャワーを浴びるか、江口さんが考えていてくださり、無事に、終了しました!

↑洗い場がないホテルでの一般的なトイレとお風呂。身障者用ではありませんでしたが、トイレもシャワーもできました。身障者用のトイレは、ホテルの一階にあります。






 就寝です。壁側のベッドですが、壁から少し離れていたので、落ちてしまう可能性もあるので、くっつけてもらいました。あとリュウは、2回誤嚥性と思われる肺炎を起こしており、S病院のH医師の指示以来、ベッドの角度を20度にしているので、枕をもうふたつ用意していただき、頭を少し起こしました。

   初めて三重県で寝ます!それではおやすみなさい!



 

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   江口優子さんの会社 ALOHA OLA(アロハ オラ)のホームページはこちら(←クリックしてください)です。
 空飛ぶドクターの坂本泰樹先生のホームページ 旅行医学の「カノヤ・トラベルメディカ」(←クリックしてください)です。

 入院中の進行性核上性麻痺のリュウと多動と自閉症の個性を持つ次男ワタルとの日常を綴った私のブログ「やさしいまなざし」はここをクリックしてください。



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