ハゲ増す会始動する!

パン君とりー坊、その仲間のストーリーです。

2012年4月〜


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第五回ハゲ増す会その1



 パン君は根気よく抗がん剤治療を続けながら仕事をしている。
 そろそろ第5回ハゲ増す会を開こうという話題が出た。
 日にちを2014年9月20日(土)21日(日)にし、場所はやはり地元組から一番近い登別温泉に。
 ホテルは前回、前々回の「巨大由緒ホテル」と違い、「こじんまり趣きホテル」だ。ここのホテルもまた情緒ある感じで楽しみ。

 温泉一泊のハゲ増す会は抗がん剤治療の合間をぬって開催されている。いまパン君は通院による治療だ。でも抗がん剤を変えるときは入院しないといけない。
 ホテルも決まり予約もし、この日が近くなってきて、抗がん剤を変えるための入院が必要となってしまった。でも、通常であれば、ハゲ増す会の一週間くらい前には退院できるとのこと。
 ところが、その日が近くなってもパン君がなかなか退院できない。ハゲ増す会LINEでも、その話題に。

「今回止めようか!」

 誰かが書き込んだ。するとパン君が、

「いや、開催してくれ!もしも俺が出れなくても」

とやや強い感じで書き込んだ。
 みんなパン君も参加できることを毎日願った。退院できない理由は、白血球の数字がよくないのだそうだ。
 パン君自身も、

「もう退院できそうか」

と書き込んだ。みんなも、

「白血球の数字はどう?」

と心配した。

 しかし前日になっても相変わらずパン君は病室からのラインの書き込みだった。そしてはっきりしないまま書き込みがなくなった。

 退院許可が出なくて、気力もなくなったんじゃ?どうしよう〜。

 私はなんて書き込めばいいのかわからなかった。他のみんなも同様のようで、誰も書き込まなかった。

 そのまま重苦しい雰囲気の当日の朝が来た。
 私とサラは札幌組で、甲斐君にまた乗せてもらうことになった。お昼になりお腹が空いてきたので、北広島のお蕎麦屋さん「なかむら」でお蕎麦を食べた。



 それから登別温泉に向かった。でも何となく三人とも今ひとつ元気がない。
 高速を降り、地元組の美穂も甲斐君の車に乗せてもらったところで、私は急に思いついたことがあった。

「パン君、入院中なんだよね?いま、四人は揃ったからこのまま顔見せに行かない?お見舞いに。私ね、ハロウィーンのチョコレートみんなに買ってきたから、それをパン君にも渡したい!」

「わかった」
 甲斐君がそう返事をし、車を温泉と反対方向に走らせた。

「一応、りー坊にもこのこと伝えるね」
 サラが言い、電話した。

「あ、りー坊?今どこなの?えっ、もう温泉?これからお見舞いに行くつもりなんだけど、りー坊も一緒に・・・、えっ、うんうんわかった」
 途中からサラの声のトーンが低くなりそのまま電話を切った。

「甲斐君、車を止めて。パン君ね、無菌室に入っていて、お見舞いに行っても会えないって」
 サラがそう言うと、甲斐君が急ブレーキを踏んで車を道路の横に止めた。みんな無言になった。

「・・・、いや、私どうしてもチョコ渡したい。病室に置いてくるだけでもいい」
 私がやっと口を開きそう言った。

「会えないんだったらバニラが行っても他の人が行っても同じだから、とりあえず温泉に向かおう。そうしてまたすぐにでもお見舞いに行く地元組にお願いしてチョコを預けたらいい」
 甲斐君がそう言った。

 私はそこで納得し、四人で温泉へ。車の中はなお重苦しい雰囲気が流れていた。

 「こじんまり趣きホテル」に着いた。地元組のりー坊とまりえちゃんはもう部屋に入っているとのこと。エレベーターでその階に行くと、まりえちゃんがエレベーター前で待っていて、まずはりー坊のいるお部屋に案内してくれた。

 私はトイレに行きたくなり、
「トイレどこ?」
と挨拶もそこそこにりー坊に聞いた。

「そこを真っ直ぐ行って突き当たりを左だ!右はお風呂だから、トイレは左だっ!」
と、りー坊はなぜか座っていたのに立ち上がり、力を込めて説明してくれた。

 私は洗面所とかのホテルのアメニティーグッズが目に入り、手に取ったりして見た。こういうグッズは、パッケージだとか置いてあるものだとかが、そのホテルホテルで違い、面白い。そのままトイレに入り、トイレの備品も見、トイレを出ると、りー坊が右はお風呂だと言ったお風呂の備え付けのグッズも気になり、半開きのドアをグッと押した。すると、ドアが何か柔らかいものにあたり、ムギュ〜となった。

 あれ?

と思い、またドアを押してぶつかるものは何だろう?と見ると、浴室に男の人が隠れていた!

 パパパパパパン君だ!

 わかるやいなやパン君の腕をつかみ、大絶叫した!

「$%’)〜〜!0O#"$'0=@~~=〜!=0+*`~|!!!」

 その絶叫は温泉街にも響くくらいだ。

「なんで風呂に行くのよ!トイレは左だって言ったべや!計画がおじゃんだ・・・」
 りー坊が私に言った。

 嬉しかった!みんなも嬉しいびっくりをした!

 本当に直前になって退院許可がおりたそう。

 やったーーー!

 その後タンクも登場し(タンクも騙された)、ダンシ四人ジョシ四人で第5回ハゲ増す会を無事に開催できることになった!

 タンクが登場した時りー坊は、言った。

「タンク、今日はジャージじゃないのか?」






2015.5.6 Vanilla記



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