ハゲ増す会始動する!

パン君とりー坊、その仲間のストーリーです。

2012年4月〜


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パン君とりー坊



 私が高校時代を過ごしたのは、1980年代初頭。
 高校のサブバッグが、マジソンスクエアガーデンのものでマジソンバッグと言った。
 当時流行っていたものは、竹の子族となめ猫で、いずれもつっぱり風。

 パン君とりー坊は、南風南高校のつっぱりグループに属していた。私とかサラは、ノーマルグループ。
 パン君は柔道部に入っていたので、髪は短かかったが、りー坊は、リーゼントヘアだった。つっぱりグループは、髪はリーゼントヘアで、眉は細く剃ってあり、見た目はこわかった。特にりー坊は、南風南高校の影の番長で、校内外で問題を起こした。らしい。問題が起こるたびに各関係者に謝っていたのが、担任のG先生。今でもG先生は、「りー坊のために私は何回謝ったか」と言う。
 そう言えば、こういうことがあった。りー坊が授業中、国語の先生と口喧嘩を始めた。大きな声で怒鳴りあっていた。授業もストップしてしまった。そのうち授業を再開してもらいたくないパン君が、りー坊に両手でサインを送った。(ながーく、ながーくして!)と、胸の前で合わせた手をぐーーっと開いたり、閉じたりしていたのだ。
 その後、やっぱり担任のG先生はこの国語の先生に謝った。

 学校の近くにたまり場になっている家があって、とっくに授業が始まっている時間に、その家からゾロゾロと歩いて登校してくるつっぱりグループが教室から見えた。徹夜で麻雀をしていたらしい。

 私は女子バスケ部に入っていて、りー坊も男子バスケ部だった。でも、ヘアースタイルはリーゼントのままだった。その男子バスケ部がある日を境に活動しなくなった。どうしたのだろうと思っていたら、どうやら男子バスケ部内で、りー坊が問題を起こしてしまい、廃部になってしまったのだ。

 4階建ての南風南高校の校舎から海が見えた。太平洋だ。
 ある日のお昼休み、私は窓の外に、白いものが見え隠れしているのに気付いて、窓にかけより、頭をぐっと出してまわりを見てみた。他のみんなも窓にかけ寄った。するとびっくりしたことに、4階の窓から、複数のつっぱりグループの生徒が、トイレットペーパーをながーく垂らしていたのだ。トイレットペーバーは、海風に乗って、自由自在に空中を舞っていた。時には細かくくるくるとまわりながら、時には風に大きくたなびいたり、私の目の前に来たかと思った瞬間に、一気に空めがけて舞い上がっていったりした。
 目で追うと、青い空に白いトイレットペーパーが映えていた。
 それを見ていると、何だか心がふーーっと解放されていくような錯覚を覚えた。空中を海風に乗って自由に泳ぎ回るトイレットペーパーが「自由」を象徴しているように思えたのだ。
 先生が気付き、またつっぱりグループが怒られないのかな?と思ったのだけれど、職員室は山側にあり、気付かれなかった。

 つっぱりグループのみんなは、ノーマルグループの私たちに気軽に話しかけてきた。
 りー坊もそうで、フレンドリー数値125で、話しかけてきた。りー坊は、一番後ろの席で隣になったとき、色んな話しをしてきた。
 夜、飲食店でバイトをしていること。そこではイカそーめんが素早く上手にできること。
 そうして、

「こういう風にイカそーめんを作るんだ」

と、机の上で、両手で手の動きを再現してくれた。私は、学校と部活のみの生活だったので、りー坊が大人に見え、聞くこと全部が新鮮だった。
 他のつっぱりグループのメンバーも、バイクで学校に来たとか、無免許でクルマで来たとか話してくれ、「へ〜!」と素直にびっくりしていた。
 みんな瞳がキラキラ輝いていた。

 パン君は、柔道部だったが、ガソリンスタンドでアルバイトするようになり、バイトが終わってから、りー坊のお店に寄っていた。二人は仲がよかった。

 私の中でパン君とりー坊は、二人で対だった。リュウと私の結婚式で、パン君とりー坊が連名で電報を打ってくれた。その内容も、形式ばったものではなく、自分たちの言葉で電報の内容を考えてくれたもので、とても印象的だった。今でも大切にとってある。
 私はリュウに、当時のつっぱりグループの写真を見せて、「この人がりー坊で、この人がパン君」といつも説明していて、リュウも名前も顔もわかるようになった。

   そのパン君とりー坊が、掲示板に参加してくれ、日常的なつながりを持てたこと、やっぱり嬉しかった。

2013.2.24 Vanilla記



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