ハゲ増す会始動する!

パン君とりー坊、その仲間のストーリーです。

2012年4月〜


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美穂とバスケ



 美穂とは南風南高校に入ってから知り合った。
 一年生の時は同じクラスだったけれど、クラス替えがあった二年生からは、クラスが別々になってしまった。
 でも、私たちはバスケットボール部だったので、二年生になってからも毎日部活で顔を合わせた。
 私は中学時代はバレーボール部で、高校になってからバスケを始めたため、へたくそだった。
 でも美穂は中学からバスケをやっていただけあって、とても上手だった。
 美穂は背は低いのだが、とてもよく走る。いつも敵からボールを奪えないかとうかがい、すばやくボールを奪うと、そのままダーッとゴールに向けて、ドリブルして行き、ゴールしてしまう。本当なら美穂がボールを奪った途端に味方が一緒に走り、パスをし合いながら自分のゴールに向かって行くのだが、ゲームの終盤ではとくに、もうみんな疲れていて走れなかった。
 でも美穂はどんな時も、試合のあいだ中、走り回っていた。そして、自分ひとりになっても、誰も責めることなく、最後まであきらめず自分のベストを尽くしていた。
 私は心の中で、「美穂ってすごいな〜!」と感心し、尊敬した。
 その姿は、高校を卒業して結婚しても、また仕事をしても、自分が所属するところにベストを尽くし続けるんだろうな〜と容易に想像できた。
 ちなみに私は、部活するのにドクターストップがかかっていた。私の体調が変だと気がついてくれたのが、未来の看護師さんのサラと、サラの親友のりこちゃんだった。サラとりこちゃんが「バニラ、最近顔色が悪いし、笑わなくなったよ」と心配して真剣に言ってくれ、私も階段も疲れて上がれない状態だったので受診してみると極度の貧血で、「診断書を書くから部活は辞めてください」と言われたのだ。
 でも私は、バスケ部のみんなと過ごす時間が楽しくて、最後まで辞めることはしなかった。

 部活の顧問タイトーは厳しくて、体力的につらいけど、みんながいるから楽しく部活活動をしていた。

 そんなある日、美穂が私だけにびっくりするような意外な秘技を教えてくれた。

「自分のゴール近くにもう敵がたくさんいるとするでしょ?そこを破ってゴールの下まで行かないといけないんだけど、ちょっとでも自分が持っているボールをたたかれたら、両足を地面にくっつけたまま、バランスを崩し、転ぶの。そうして相手に違反取らせて、フリースローに結びつけるの」

 そう言われてみると、美穂が試合で、ゴール下で派手に転んでいることがあった。まるでつきたての白い餅がベタンッと、そうベタンッと床に叩き付けられるように。それは痛そうで、味方はもちろん、相手からも、監督からも心配されるものだ。あれがそう?それは、自分以外の人全員を騙しているのか。いや、でも、本当に転んでいるように見えるけど・・・。
 今度、私もやってみようか。でも、私がやったら大根役者みたいにわざとらしくなるから絶対にできない。

 そのとき私は美穂から、勝負は正攻法だけではないということを学んだ。

 あと美穂は、視力がとてもよかった。部活動が終わり、バス停でバスを待っていると、坂の向こう側から上がって来るバスの頭が少しでも見えたら、バスが来た!とみんなに教えてくれた。誰も見えないうちにバスを確認し、みんなに教えてくれる姿はまるで、アフリカの草原で、はるか向こうに、獲物の動物が見えたらみんなに教えてくれる、と言った感じで有り難かった。



2014.11.3 Vanilla記



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