パン君とりー坊、その仲間のストーリーです。 |
2012年4月〜
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いつだったか、5年くらい前・・・か、リュウが病気で仕事ができなくなり、私がリュウの代わりにフルタイムで仕事をするようになってからの話だ。りー坊にこれからのことアドバイスをもらえないかと、私はりー坊と対面していた。 場所はススキノ、何かの席でのことだ。 「これこれこうで、リュウは難病になり、私が家計を支えることになったの。大変だけど仕方ないわ。それでね、一家の大黒柱としての心構えや気を付けなければいけないことを教えて欲しい」 私が真剣にそう言うと、りー坊も真剣な目で、 「バニラ・・・、大変だな・・・。わかった」 と返事をして、なお一層真剣な目で、私の目を見た。私も目をそらさないように、りー坊の目を見た。 「まず」 りー坊がそう言った。 (まず) 「まず、朝行ってきますと言って、家の玄関のドアを閉めるだろ?」 「ウン」 「閉めた途端・・・」 「ウン」 「男には、七人の敵がいる!」 (え!敵が七人?) 私は、目をそらさず、真剣な眼差しでりー坊の目を見つめていた。 (敵が七人?え!今の職場、人数が10人未満のことが多いけど、もしかしたら、朝会社の玄関開ける前に、ファイティングポーズして、入らないといけない?いつどこで、敵にヤラれるかわからないってことだよね?あれ?いや、家の玄関を閉めた後だから、近所の人も?いや、通勤途中の人もだ!あ〜〜〜〜!そう言えば、りー坊って、今もだけど、いつもまわりをうかがっているような感じだわ!いつでも、物陰から刃渡り30センチのナイフを持った不審人物が、自分に向かって飛び出しても、交わすことができるような、そんな感じしているわ!私もそうしないといけないんだわ) 私は、いろいろなことを頭の中で考え、ゆっくりと首を縦に振り、うなづいた。 うなづいた私を見たりー坊は、よしバニラに話が通じた、というような表情をした後、また違う重要なことを話し始めた。 「それから一番大切にしないといけないのは・・・」 (一番大切にしないといけないのは?) 心の中で、りー坊のセリフを繰り返して、私はごくっとつばを飲んだ。 「一番大事にしないといけないのは・・・、自分だ!」 りー坊はそう言った。 私は、そのセリフを聞いて、一瞬ホワッと体の力が抜けた・・・。 「一番大事なのは、お国だ!」 と言われるような気が少ししていて、そう言われたらどうしようと思ったからだ。 「うん」 私はりー坊の目を見つめたまま深く頷いた。私も常日頃から、そう思っていた。 例えば、誰か自分自身のことを粗末にし、自暴自棄になっている人がいるとしよう。その人を目の前にし、自分を大切にしていない人が、自分を大切にしろと言っても、説得力があるだろうか。誰の人生でもない、自分の人生。まず、ひとりひとりが自分を大切にするところから、すべてが始まるんじゃないか?と私も思っていたので、りー坊のセリフに、深く頷いたのだった。 「次に大切なのは、家族だ」 「うん」 「その次は、仕事だ」 「うん」 「その次が、友だちだ」 「うん」 私は、りー坊の目をそらさないで、頷いた。 りー坊と私の大切にするものの順番がほぼ一致していた! 私は緊張しながら、りー坊の大切な私への教示を聞いていたが、聞き終わったあと、からだ中の力が抜け、フゥ〜ッと小さく息を吐いた。 今のままの私でいいんだ!好きなケーキも食べたい時に思い切り食べていいし、友だちと美味しいもの食べに出かけてもいいし、ビールもいっぱい飲んでいいんだ!自分のためにお金や時間を使ってもいいし、やりたいこと、好きなことをやってもいいんだ! そして、無理な時は無理と言って、少し休息しよう・・・。 そう思ったら、元気が出てきた。からだの中から、力が湧いてきた。 |
2014.1.5 Vanilla記 |
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